事例
完璧なアボカドとは?エネルギーと食品廃棄物を削減する新たなシステム
当社は新しい Softripe システムで、果実と対話をしています。果実の声に耳を傾けるのです。
英国の Spalding では、Worldwide Fruit 社が、従来の熟成工程後のアボカドの不揃いと短い賞味期限という課題に悩まされていました。グルンドフォスのポンプを中心に据えた JD Cooling 社による新しい Softripe システムは、インテリジェンス、制御、効率を向上させました。このシステムは、果実を 40% 早く熟成させ、従来の熟成システムよりもエネルギーを約 30% 節約し、廃棄物を 7% 削減します。「このシステムは、私たちのすべてを変えました」と、Worldwide Fruit 社の熟成責任者は言います。
状況
アボカドは英国の卸売業者、小売業者、消費者に難題を突きつけていました。そのプロセスは樹木に生ったアボカドから始まります。アボカドの実は主に南半球で育ち、ある程度成熟した実は収穫されて、北半球へ出荷されます。
収穫後も熟成は続き、特別な輸送コンテナで管理された空調下で北へ運ばれます。
James Tumber 氏(左)とWorldwide Fruit 社の熟成責任者 Ilona Stylinska 氏(右)
従来の熟成システムでは、熟成前のアボカドを部屋に入れて温め、人工空気で果実を熟成させていました。
卸売業者や流通業者は小売業者に供給する前に、自社施設で果実を熟成させ続けていましたが、その結果は安定していませんでした。
「長きにわたって、消費者がアボカドを4個買うと、1個は熟し、1個は翌日には大丈夫になり、1個は硬いままで、1個は柔らかくなりすぎるといった具合でした」と、温度制御システムビルダーである JD Cooling 社の、スペシャリストサービスディレクターの James Tumber 氏は言います。
従来の熟成システムは、ほとんどが手作業で行われるため、実の熟成の度合いはばらつき、無駄が生じていました。
「従来の熟成システムでは、熟成前のアボカドを部屋に入れて温め、人工空気で実を熟成させていました」と、Worldwide Fruit 社のアボカド事業部ディレクターの Mark Everett 氏は言います。
Worldwide Fruit 社の熟成責任者の Ilona Stylinska 氏は、この 「古風 」で標準的な工程は、正確さよりも感覚に頼っていると述べました。
「ドアを開け、アボカドを載せたパレットを高温の部屋に入れ、ドアを閉めます。パレットを入れたり出したりするために、毎日2、3回ドアを開ける必要がありますが、それはアボカドにとってはストレスです。そして実を切ってテストし、熟すのを待つ必要があります」。
パレットに積まれたアボカドは、Softripe の2段式チャンバーに入れられます。
テストのために切られる実の量は決して少なくありません。JD Cooling 社の会長兼創設者である John Dye 氏は、「Worldwide Fruit 社は、アボカド生産量の約3.6%をテストで消費していました」と言います。「これは少ない数字に見えるかもしれませんが、ヨーロッパ全体のアボカド供給量をこの数字で計算すると、熟度をテストするためだけに破棄される実は、年間約2万トン、もしくはコンテナ1000個分に相当します」。
ソリューション
JD Cooling 社は、熟成プロセスを近代化し、バリューチェーン全体をより持続可能なものにするソリューションを提供しました。
Softripeと呼ばれるこのシステムは、熟成テスト過程で消費されるアボカドの数を大幅に減らすだけでなく、より早く、より安定的に熟成させます。Worldwide Fruit 社は、アボカドの熟成と取り扱いにおける無駄とエネルギーを削減することができます。スーパーマーケットと消費者は、より美味しく、より長持ちするアボカドを楽しむことができます。
「Softripeシステムのおかげで、これまで以上に一貫性を保つことができるようになりました。完熟と書いてあれば、本当に完熟していると確信できるのです」と Mark Everett 氏は言います。
Softripeシステムのおかげで、これまで以上に一貫性を保つことができるようになりました。完熟と書いてあれば、本当に完熟していると確信できるのです。
Softripe は、果実にとって理想的な熟成環境を、可能な限り樹上に近い状態で与えようとするものです。「Softripe では、アボカドのパレットを密閉された部屋に入れます。そして、最適な方法で実を熟成させるために、温度やガスミックスなど、工程のあらゆる部分を制御することができるのです」と、Mark Everettは述べます。
混合ガスには、酸素、窒素、二酸化炭素、そして果物が発するガスであるエチレンが含まれます。「オペレーターはコンピューターに、どの製品、原産国、部屋にどれだけの量があるかを指示します。するとアルゴリズムが処理を開始します。その時点から、システムは果実が必要とするときに必要なことを行うのです」と James Tumber 氏は言います。
「果実が熟すまで、Softripe システムに人間が介入することはありません。コンピューターが『はい、できました。』と教えてくれます。そして、スーパーマーケットへ、消費者へ、この旅を続けることができるのです。」
Softripe 後のアボカド生産エリア。
Tumber 氏は言います。「Softripeプロセスでは、果実の声に耳を傾けています。私たちは果実と対話をしています。果実に必要なものを必要な時に与えているのです」。
Ilona Stylinska 氏はそれに付け加えます。「果実にストレスを与えることはありません。例えば月曜日にドアを閉めたら、金曜日にドアを開けます。部屋の中には入りません。私たちは果実を取り出すことも、無駄にすることも、切ることもありません。熟すことを邪魔しないのです。ドアを閉めたら、開けることなく、果実が熟すのを待つだけです」。
その過程で Softripe は果実の呼吸を監視し、最適な熟度を見極めます。「私たちは、果実がいつ熟すかを判断する Softripe システムを信頼しています。果実を切って無駄にする量は減るのに、結果的に美味しくなります」とEverett 氏は言います。
Softripe の採用以前は、アボカドの賞味期限は3~4日でした。 Softripe プロセスのおかげで、通常5~7日に延びました。John Dye 氏によれば、消費者レベルでのアボカドの食品廃棄に関する正式な数字はないとのことですが、「家庭での食品廃棄はもっと少なくなっているはずです。仮に廃棄物の10%削減という数字で見たとしても、ペルーやその他の地域から毎年6万トンもの廃棄物を削減できることになります。コンテナとその中身の移動は、世界中で節約できるのです」。
「私たちは、果実がいつ熟すかを判断する Softripe システムを信頼しています。果実を切って無駄にする量は減るのに、結果的に美味しくなります。」- Mark Everett 氏
重要部品としてのポンプ
Softripe の輝く表面の裏側では、ポンプが重要な役割を果たしています。James Tumber 氏は言います。「温グリコールと冷グリコールについては、メインの循環ポンプに頼っています。部屋に熱を入れ、部屋から熱を出す必要があるため、これは重要な部品です。エネルギーを節約するだけでなく、このシステムは冷却プロセスから熱を回収し、暖房に利用しています」。
Softripe のアルゴリズムは熟成に必要なガス、熱、時間を完璧に制御します。果実の熟成が完了すると、コンピューターがオペレーターに知らせます。
グルンドフォスのスマートポンプは、効率を高めるだけでなく、制御レベルも向上させると彼は言います。「絶対効率を確保するため、ポンプに温度補償圧力制御を搭載しています。これは今までのポンプシステムでは見たことがなかったものです」。
また、信頼性も重要なポイントです。「信頼性を保証し、かつ技術を理解してくれるパートナーのソリューションが必要でした」。
John Dye 氏はさらに付け加えます。「グルンドフォスと一緒に仕事をしたいと思ったのは間違いありません。グルンドフォスには何年もお世話になっています。当社はグルンドフォスと話ができることを知っています。設計段階で、当社がやろうとしていることをサプライヤー、この場合はグルンドフォスに話すことができるのは重要なことです。ポンプをシステムに導入する際には、何も考える必要はありません。すべて考え抜かれ、選択され、設置されているため、試運転をすればうまくいくことが分かるのです」。
「信頼性が重要です。それが、私たちがグルンドフォスを選んだ理由です。」- James Tumber 氏
成果
3年間使用した結果、Softripe はアボカドを40%早く熟成させることが証明されました。Worldwide Fruit 社は、従来のシステムと比較して、熟成した果実1キロ当たりの電力消費量を30%削減しました。
熟成が終わると、工場の作業員がそれぞれのパレットからアボカドのサンプルを取り出して検査します。その後、すべてのパレットは荷降ろしされ、梱包と配送のために生産工場に送られます。
John Dye 氏は言います。「Worldwide Fruit 社のようなサプライヤーは、このシステムによって経費を節約することができます。投資回収率は信じられないほどです。持続可能性ということがすべてであり、果実の無駄が減り、生産量が増えるということがすべてなのです。」
バナナの熟成も Softripe で同様の効果が証明されていると彼は言います。「バナナの消費量はヨーロッパのアボカドの10倍です。つまり、年間60万トンのバナナが廃棄されるのを防ぎ、その結果、バナナの輸送に掛かるエネルギーとCO2を削減できる可能性があるということです」。
Worldwide Fruit 社の Ilona Stylinska 氏は Softripe が全てを変えたと言います。「果物の注文方法が変わりました。果物の買い方、配送方法、梱包方法。Softripe は私たちのプロセスを完全に変えました。今、私たちがいるここは、どんどん良くなっています」。
James Tumber 氏は、Softripe システムの背後にあるグリコール用グルンドフォスNBE循環ポンプのメインステータスを、スマートフォンアプリでチェックしています。
出典
本稿の情報は、2022年4月に英国 Spalding にあるWorldwide Fruit 社で行われた、すべての関係者へのインタビューから得たものです。
グルンドフォスの供給:
Softripe システムの主要温度制御用に、グルンドフォスはIE5モータを搭載したスマートポンプNBEを供給しました。これは、電動機の国際効率(IE)標準評価システムで最高の効率を誇る「Ultra-Premium Efficiency」に指定されています。高温と低温のグリコールを動かすポンプは、温度補償圧力制御用にプログラムされています。
グルンドフォスはまた、Modbus プロトコル (CIM200) のデジタル通信カード、密閉された高温および低温グリコールシステムが漏れた場合に確実に加圧されるための加圧ユニット (PHT) 、システム媒体温度 (GT) の変化を可能にする高温およびグリコールシステム用の膨張容器も供給しました。
詳細は こちら
お客様の声:
当社は家庭における食品廃棄を減らしました。スーパーマーケットの棚でも、食品廃棄を減らしました。この施設によって、多くの食品廃棄を削減したのです。
私たちは、果実がいつ熟すかを判断する Softripe システムを信頼しています。その結果、廃棄やカットする果実の量が減り、より良い結果が得られています。廃棄量を減らし、最終的な生産量を改善することで、すべての人にとって、そして環境にとっても良い結果をもたらしているのです。
Softripe の事実
- 密閉された部屋で果実を熟成させる
- 熱、冷却、ガス、時間を組み合わせて果実を熟成させる
- 熟成時間を 40% 短縮
- 7%の食品廃棄から 0.5% の食品廃棄へ
- 従来の熟成方法 = 1サイクルで 60~80% のみ熟成
Softripe = 1サイクルで95% 熟成 - Softripe により、アボカドの保存期間が2倍になり味と食感も向上
- 従来の熟成システムより 30% エネルギーを節約
- 年間CO2削減量: = 96トン(栽培、輸送による削減を含む)でアボカドの木570本の栽培に必要な量に相当。
出典: JD Cooling Group